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BLOG 悩み解決 2026.09.24 READ 11 MIN

ゲームで痛める場所は手首が最多だった。大学選手153名の調査

こんにちは、GAME STEP編集部です。

ランクを回した翌朝、マウスを持つ手の付け根に鈍い感じが残っている。しばらくすると消えるので、そのままにしている。そういう方は少なくないと思います。

ただ、どこが痛くなりやすくて、どれくらいの人が痛めているのかは、あまり知られていません。米国の大学の代表選手を対象に、それを部位ごとに数えた調査があります。

数えてみると、順番がはっきり出ました。

ランクを回した翌朝、マウスを持つ手の付け根に鈍い感じが残っている。

湿布を貼るほどではない。動かないわけでもない。しばらくすると消えるので、そのままにしている。痛みというより、違和感に近いものです。ゲームを長くやっている方なら、一度は覚えがあるのではないでしょうか。

こういう小さな不調は、話題になりにくいものです。誰かに相談する種類のものでもないし、そもそも自分だけなのかどうかも分かりません。

2022年に、米国の大学代表eスポーツ選手を対象に、どこを・どれくらいの人が痛めているのかを部位ごとに数えた調査が発表されています。整形外科の医師たちが行ったものです。

思い当たるところがあれば、この先に数字があります。

  • 長時間プレイした翌日、手首や指に違和感が残る
  • 姿勢が悪いと分かっているが、気づくと前のめりになっている
  • 痛くなっても「休めば治る」で済ませている
  • 休むと調子が落ちる気がして、痛くても続けてしまう

この研究では何を調べたのか

調査を行ったのは、米国のトーマス・ジェファーソン大学の整形外科と、ロスマン整形外科研究所のスポーツ医学チームです。2022年11月に医学誌 Cureus で公開されました。

米国の大学eスポーツは、2016年には代表チームが7校でしたが、この論文の時点で200校を超えています。それだけ増えた一方で、選手の体に何が起きているかを部位ごとに数えた調査はほとんどありませんでした。

連絡先が公開されている大学に声をかけ、153名から回答が集まりました。135名(88.2%)が男性で、平均年齢は21.0歳(18歳から42歳)です。

質問票で聞いたのは次のとおりです。

  • 年齢・性別・チームに在籍した年数
  • 1日あたりのプレイ時間、週あたりのプレイ日数
  • 奨学金の有無
  • 部位ごとのケガの経験(親指・指・手・手首・肘・首・背中・肩)
  • 手術が必要だったか
  • 大会を休んだ期間

この調査は選手が自分で答えたもので、医療機関の記録と突き合わせてはいません。「診断されたケガ」ではなく「本人がケガだと申告したもの」を数えています。

研究で分かったこと

4人に1人がケガをしていた

153名のうち、41名(26.8%)が、eスポーツが原因のケガを1回以上していました。

その41名の内訳です。

  • 3名(41名の7.3%)が手術を必要とした
  • 17名が複数回ケガをしている(41名の41.5%、153名全体では11.1%)
  • 7名(41名の17.1%)が大会を休んだ。休んだ期間は平均3.0週間(1週間から8週間)

「4人に1人」という数字は、低く出ている可能性があると著者らは書いています。ほかの研究は「痛み」を数えていて、有病率は42.6%以上と報告されている。この調査は「ケガ」を数えているので、同じものを測っていません。

最も多かったのは手首

記録されたケガは合計75件でした。部位ごとの内訳がこちらです。

部位件数割合
手首2533.3%
首1114.7%
背中1013.3%
指912.0%
手810.7%
肘68.0%
親指45.3%
肩22.7%

手首だけで3分の1を占めています。手首・手・指・親指を「手まわり」としてまとめると46件で、全体の61.3%。この足し算は論文には書かれていないもので、編集部が数えました。

著者らによれば、過去の3つの比較研究でも、手首・背中・首が問題になりやすい部位として挙がっています。

大会を休むことになったケガは12件で、こちらも手首が3件で最も多く、指が3件、肘が2件、親指が2件、手と背中が1件ずつでした。

差が出たのは「週の日数」ではなく「1日の長さ」

週に何日プレイするかでは、差が出ませんでした。 4.7日と4.5日で、統計的に有意な差はありません(p=0.49)。ケガの件数との相関もほぼゼロでした。

統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差が出た、ということを表す言い方です。逆に「有意な差はなかった」は「差がないと確かめられた」という意味ではなく、「今回のデータでは差があるとは言い切れなかった」という意味になります。

相関は、片方が増えるともう片方も増える(あるいは減る)という結びつきの強さを、プラス1からマイナス1までの数字で表したものです。プラス1に近いほど「増えれば増える」、マイナス1に近いほど「増えれば減る」、0に近いほどどちらの向きにも結びつきがないことを意味します。

差が出たのは、1日あたりの長さのほうです。1日5時間を超えてプレイする割合は、ケガをした人で31.7%、していない人で10.7%でした(p=0.01)。

チームに在籍した年数にも差がありました(2.0年と1.7年、p=0.03)。一方で、年齢・性別・eスポーツを始めた年齢・奨学金の有無では、いずれも差が出ていません。

著者らはここから、長い期間に途切れ途切れでやることより、1日にやりすぎることのほうがケガに結びついていると解釈しています。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

読み方には、先に2つ条件が付きます。

これは対照群のない横断調査です。ある時点で選手に聞いただけなので、「5時間を超えると痛める」という因果は言えません。言えるのは「ケガをした人のほうが、5時間を超える割合が高かった」までです。

対象も限られています。米国の大学代表選手で、平均21.0歳、88.2%が男性。日本の社会人プレイヤーとは前提が違います。

そのうえで、使えるところが2つあります。

1つは、痛める場所の順番です。 手首・手・指・親指で6割を超えるという内訳は、対策の順番をそのまま示しています。椅子や照明を見直す前に、まず手まわりです。

もう1つは、週の日数では差が出なかったという結果です。 「毎日やっているから危ない」ではなく、「1日に長くやりすぎる日があるかどうか」のほうに差が出ていました。たとえば週5日を2時間ずつやる場合と、週2日を6時間ずつやる場合では、この調査で差が出た側に近いのは後者です。この2つの組み合わせを調査が試したわけではありません。数字の意味を分かりやすくするために、編集部が並べた例です。

なお著者らは、なぜ手まわりなのかの背景として、eスポーツのプレイはキーボードやマウスの操作回数がオフィス作業よりはるかに多く、腱にかかる負担が大きいと書いています。ただしこれは著者らが別の文献をまとめて引いた記述で、この調査が測ったものではありません。

以前本ブログで紹介した運動を6週間続けたら反応が速くなった試験の記事は、体を動かすと数字が上がったという話でした。こちらは、その体を痛める話です。同じ「ゲームの外の体」を、逆の側から見た結果として並びます。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。すでに痛みがある方、しびれや力の入りにくさがある方は、自己判断で続けずに医療機関にご相談ください。

1. 週の日数ではなく、1日の上限を決める方法があります

この調査で差が出たのは1日あたりの長さでした。「週に何日やるか」より「1日に何時間で止めるか」を先に決める方法があります。

2. 手まわりの違和感が出た日は、延長しないと決めておく方法があります

先に見た内訳のとおり、痛めた場所は手まわりに集中していました。違和感の段階で止める線を先に引いておくほうが、痛くなってから決めるより守りやすいと考えます。

3. 痛みが2週間続くなら、医療機関に相談する方法があります

この調査では、ケガをした41名のうち3名が手術を必要としていました。期間の目安は研究が示したものではなく編集部の判断ですが、続く痛みを様子見で引き延ばさない線はどこかに要ると考えます。

4. 長くやる日の前に、机と椅子の高さを見ておく方法があります

姿勢や座りっぱなしは、著者らが背景として触れているだけで、この調査では測っていません。それでも首と背中が2位と3位に入っている以上、見ておく価値はあると考えます。

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この研究から分かること

  • 米国の大学代表eスポーツ選手153名(男性135名・平均21.0歳)が回答した
  • 41名(26.8%)がeスポーツが原因のケガを1回以上していた
  • その41名のうち、3名(7.3%)が手術を必要とし、7名(17.1%)が平均3.0週間の大会離脱をした
  • 17名が複数回ケガをしていた(ケガをした41名の41.5%、回答者153名の11.1%)
  • 記録された75件の内訳は、手首25件(33.3%)・首11件・背中10件・指9件・手8件・肘6件・親指4件・肩2件
  • 1日5時間を超える割合は、ケガをした人で31.7%、していない人で10.7%(p=0.01)
  • 週あたりのプレイ日数では差が出なかった(4.7日と4.5日、p=0.49)
  • 年齢・性別・開始年齢・奨学金の有無でも差は出なかった

この研究だけでは分からないこと

論文の末尾には、この調査の弱いところが7つ並んでいます。

  • 対照群のない横断調査なので、一般化と因果の判断ができない
  • 女性の回答が18名しかなく、性別による違いが見えにくい
  • 連絡先が公開されている大学だけに声をかけた集め方で、無作為ではない
  • そのため回答率が低い
  • ケガは自己申告で、医療記録での確認をしていない
  • 似た年齢の大学生ばかりを調べたため、もっと幅広い年齢で見れば分かる関係を取りこぼした可能性がある
  • 1日あたりの時間を区分で聞いたため、練習量とケガの相関係数を計算できなかった

加えて、読むときに気をつけたい点が2つあります。

同じ「17名」が、11.1%にも41.5%にもなります。 論文でも、抄録は41.5%(ケガをした41名のうち)、結果の節は11.1%(回答者153名のうち)と書き分けています。この種の数字は、何のうちの何割かを確かめないと意味が変わります。

日本のプレイヤーは含まれていません。 対象は米国の大学代表選手です。プレイ環境も、1日に取れる時間も、日本の社会人プレイヤーとはかなり違います。

まとめ

大学代表選手153名のうち26.8%がケガを経験しており、痛めた場所は手首が3分の1で最多でした。差が出たのは週の日数ではなく、1日あたりの長さのほうです。

変えるとしたら、入り口はここだと思います。プレイを始める前に「今日は何時間で止めるか」を決めておく。 週に何日やるかのほうは、この調査では関係がありませんでした。

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GAME STEPは、上達を「才能や気合」ではなく「環境とルールの設計」の問題として扱う、eスポーツの個別コーチングサービスです。
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体を痛めて離脱すれば、そこで積み上げは止まります。上達を続けるための条件には、続けられる体でいることも含まれると考えています。止める線を先に引いておくのは、我慢ではなく設計の話です。
続けられる体をどう作るかについては、運動を6週間続けたら反応が速くなった試験を扱った記事があります。

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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。この記事は診断や治療の助言ではありません。 痛み・しびれ・力の入りにくさがある方、症状が続いている方は、自己判断せず医療機関にご相談ください。紹介した調査は対照群のない横断調査で、練習時間とケガの因果関係を示したものではありません。

参考文献

  1. Clements, A. J., Paul, R. W., Lencer, A. J., Seigerman, D. A., Erickson, B. J., & Bishop, M. E.(2022). “Analysis of Musculoskeletal Injuries Among Collegiate Varsity Electronic Sports Athletes” Cureus, 14(11), e31487. doi.org/10.7759/cureus.31487
  2. Tang, D., Zhang, X., Ho, R. W.-K., Choi, S. M., Ye, Z., Campbell, M. J., & Sum, R. K.-w.(2025). “Effect of Physical Exercise on Esports Performance in First-Person Shooter Gamers: A Six-Week Randomized Controlled Trial” Sports Medicine - Open, 11:162. doi.org/10.1186/s40798-025-00970-2
WRITER
GAME STEP編集部

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