ゲームの疲れ目、160名の研究で差が出たのは近見作業だった
こんにちは、GAME STEP編集部です。
長い時間ゲームをした日に、目がかすんだり、近くのものにピントが合いにくくなったりすることはないでしょうか。
つい「目が疲れた」で片づけてしまいますが、画面を長く見続ける人の目に何が起きているのかを、eスポーツ選手とそうでない人を比べて調べた研究があります。
出てきたのは、「ゲームをしなければ平気」という単純な話ではありませんでした。
「夜遅くまでゲーム配信の練習をしていたら、目がかすんできた気がした。」
「大会直前、何時間もモニターに向き合っていると、近くのものにピントが合いにくくなった。」
こうした感覚を、ひとまとめに「疲れ目」と呼んでしまうことは少なくないのではないでしょうか。原因が画面なのか、生活習慣なのか、そもそも目そのものの問題なのかは、意外と切り分けづらいものです。
今回取り上げる研究は、画面を長時間見るeスポーツ選手の目を、そうでない人と比べて調べたものです。2024年に公開されました。
こんな迷い方をしたことがあるかもしれません。
- 長くプレイした日に、目がかすむ・乾く感じがある
- 近くのものにピントが合いにくくなる
- 「ゲームをやめれば治る」と言われるが、本当か分からない
- 疲れ目の原因が、画面なのか生活習慣なのか切り分けられない
この研究では何を調べたのか
調べたのはタイの研究チームです。2023年4月から6月にかけて、デジタル機器を使う20~35歳の男性160名を対象にしています。内訳は、eスポーツ選手76名と対照群74名で、全員が男性です。
参加者には、遠見6mと近見40cmの2つの距離で眼の検査を行い、あわせてCVSの有無や、その関連要因を調べています。
CVS(コンピュータービジョン症候群) とは、画面を長時間見続けることに伴って起こる、目や首・肩まわりの不調をまとめて指す言葉です。目のかすみ、乾き、ピントの合いにくさなどが含まれます。
対象はタイの20~35歳の男性に限られています。年代や性別が異なる人に、そのまま当てはめられる研究ではありません。
なお、この研究は一時点で2つのグループを比べる横断的な設計です。「ゲームをすると疲れ目になる」という原因と結果の関係を確かめたものではないという点は、先に押さえておきたいところです。
研究で分かったこと
eスポーツ選手のCVS有病率は89.47%だった
eスポーツ選手のCVS有病率は89.47%でした。これは対照群の25.68%より高く、発生率の差も統計的に有意でした(p<0.001)。
統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差が出た、ということを表す言い方です。逆に「有意な差はなかった」は「差がないと確かめられた」という意味ではなく、「今回のデータでは差があるとは言い切れなかった」という意味になります。
ここで見落としたくないのが、対照群の数字です。ゲームを競技としてやっていない側でも、25.68%がCVSに該当していました。
対照群にも症状を持つ人が一定数いました。「ゲームをしなければ疲れ目にならない」という単純な対比ではありません。
著者らは、他の先行研究でもCVSの有病率は72.1%~88.6%の範囲で報告されており、今回の結果と一致すると述べています。
差がはっきり出たのは近見40cmの検査だった
2つの距離のうち、はっきりとした差が出たのは近くを見る側でした。
近見40cmでの外斜位は、eスポーツ選手が3.556±3.369Δ、対照群が3.029±5.530Δで、統計的に有意な差がありました(p<0.001)。
外斜位は、両目でしっかり見ていないときに、視線が外側へずれようとする傾向のことです。Δ(プリズムジオプター) は、そのずれの大きさを表す単位です。
一方、遠見6mのほうは様子が違いました。矯正視力(logMAR)は対照群が0.005±0.027、eスポーツ選手が0.013±0.043で、こちらにも有意な差はありました(p<0.020)。ただしこれは小さな差で、遠見では矯正視力以外の外斜位などに有意な差は確認されていません。
logMAR は、矯正視力を表す尺度の1つです。値が小さいほど視力が良いことを示します。
著者らは、近見での外斜位の増加について、eスポーツ選手がコンピューターを長時間使い、休憩が不十分なことが原因と考えられると述べています。また、長時間のコンピューター使用が調節機能(ピントを合わせる働き)を低下させ、眼精疲労を増やすとも考察しています。
はっきり差が出たのは近見40cmの条件です。この研究の結果は、近くを見る作業に関するものとして読む必要があります。
リスクを高めたのは生活と環境の要因だった
CVSのリスクを高めた要因も挙げられています。デジタル機器を日に4時間を超えて使うこと、飲酒歴があること、ストレスは、いずれもCVSのリスクを有意に高めていました(それぞれp<0.001、p<0.023、p<0.048)。
著者らは、飲酒について、短期・長期を問わず網膜への血流を減少させる可能性があると指摘しています。
グループの年齢にも差がありました。eスポーツ選手は対照群よりやや年齢が高く(28.48±4.26歳 対 26.95±4.65歳、p<0.040)、この差が結果に影響した可能性もあります。
作業環境にも触れておきます。参加者のうち66.67%が高照度の環境で、33.33%が低照度の環境で働いていました。著者らは、職場の照明強度を400~500lxの範囲に保つことが推奨されていると述べています。
日に4時間を超えるデバイス使用などの要因は、eスポーツ選手に限らず、一般的なデジタル機器利用者にも当てはまる要因として示されたものです。
eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか
まず押さえておきたいのは、これが横断研究だという点です。ある時点で2つのグループを並べて比べているだけなので、「ゲームが疲れ目を引き起こす」という因果までは言えません。対照群にもCVSに該当する人がいたこと、2つのグループで年齢がやや違ったことも、結果を読むときに考えておきたいところです。
そのうえで、この研究から読み取れることがあります。差がはっきり出たのは、遠くではなく近くを見る作業の検査でした。疲れ目を「目が悪いから」とひとくくりにしがちですが、少なくともこの研究が指し示しているのは、近くを長時間見続けることの負担のほうだと考えられます。
リスク要因として並んだのも、使用時間・飲酒・ストレスといった、生活習慣や環境にまつわるものでした。画面そのものだけでなく、その周りの過ごし方も関係していると考えられます。
一方で、この結果を自分の目の状態にそのまま当てはめるのは早いかもしれません。この研究では、もともとドライアイの症状を訴えていた人は対象から除かれています。すでに目の不調を抱えている人の疲れ目の指標として、この結果をそのまま使うことはできません。
実際のプレイ環境にどう取り入れるか
ここから先は、研究で直接確かめられたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。
1. 近くを見続ける時間を振り返り、休憩を挟む方法があります
長い時間、近くの画面を見続けていないかを振り返り、合間に休憩を挟む方法があります。この研究は休憩そのものの効果を確かめたわけではありませんが、リスク要因として長時間の使用が挙がっていました。
2. 作業環境の明るさを見直すきっかけにする方法があります
作業する部屋の明るさを見直すきっかけにする方法があります。ただし、この研究はタイの職場の照明基準を参照して比較したもので、読者それぞれの環境で最適な明るさを確かめたわけではありません。具体的な数値の目安として使えるものではないと考えます。
3. 飲酒の習慣と目の疲れとの関連を振り返る方法があります
飲酒の習慣と目の疲れとの関連を、生活習慣を振り返るきっかけとして考える方法があります。ただし著者ら自身、飲酒の量や頻度については今後さらに確かめる必要があると述べており、因果関係が証明されたわけではありません。
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この研究から分かること
- 対象はタイの20~35歳の男性160名(eスポーツ選手76名・対照群74名)で、全員が男性
- eスポーツ選手のCVS有病率は89.47%で、対照群の25.68%より高かった(発生率の差はp<0.001)
- 近見40cmでの外斜位は、eスポーツ選手3.556±3.369Δ・対照群3.029±5.530Δで有意差があった(p<0.001)
- 遠見6mでは矯正視力(対照群0.005±0.027・eスポーツ選手0.013±0.043、p<0.020)に小さな差があったが、外斜位などでは差が確認されなかった
- デジタル機器を日に4時間を超えて使うこと・飲酒歴・ストレスが、CVSのリスクを有意に高めた(p<0.001、p<0.023、p<0.048)
- eスポーツ選手はCVSの発生率が有意に高く(p<0.001)、年齢もやや高かった(28.48±4.26歳 対 26.95±4.65歳、p<0.040)
- 参加者の66.67%が高照度の環境で、33.33%が低照度の環境で働いていた
この研究だけでは分からないこと
- 一時点で2つのグループを比べた横断研究のため、ゲームが疲れ目を引き起こすという因果関係は示せない
- 対象はタイの20~35歳の男性160名に限られており、年代や性別が異なる人には当てはめられない
- もともとドライアイの症状を訴えていた人は対象から除かれており、ドライアイがある人の疲れ目の指標としてはそのまま使えない
- 対照群にも25.68%がCVSに該当しており、ゲームをしない人と無縁な症状ではない
- eスポーツ選手は対照群よりやや年齢が高く(28.48歳 対 26.95歳)、その差が結果に影響した可能性がある
- リスク要因として挙がった4時間超の使用・飲酒・ストレスは、eスポーツ選手に限らず一般のデジタル機器利用者にも当てはまる要因である
まとめ
ゲームをした後の疲れ目を、「目が悪いから」「ゲームのせい」とひとまとめにしがちです。この研究で差がはっきり出たのは、近くを見る作業の検査でした。一方で、対照群にも同じ症状を持つ人がいて、生活習慣や環境の要因もリスクに並んでいます。
今日からできることを1つ挙げるなら、近くの画面を見続ける時間を区切って、合間に休憩を挟むルールを作ること。これを、編集部は実践の一例として提案します。
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目や体のコンディションは、プレイの環境づくりの一部です。長く画面に向かう人ほど、何を意識するかより、どんな環境と習慣でプレイしているかが効いてくる場面は多いと考えています。
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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。この研究はタイの20~35歳の男性を対象とした横断研究であり、もともとドライアイの症状がある人は対象から除かれています。目の不調が続く場合は専門の医療機関にご相談ください。
参考文献
- Chaiwiang, & Koo-akarakul(2024). “Computer Vision Syndrome and Visual Functions Among Esports Athletes” Clinical Optometry. doi.org/10.2147/OPTO.S460868
eスポーツ・ゲームに関する研究を、プレイヤーが実際に使える知識へ翻訳して届けています。運営:eスポーツ個別コーチング「GAME STEP」