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BLOG 悩み解決 2026.07.28 READ 10 MIN

FPSで連敗するとイライラする原因は「気合不足」ではなかった

こんにちは、GAME STEP編集部です。

連敗でイライラして、そのまま続けてさらに崩れる。試合が終わってから「メンタルが弱いからだ」と落ち込んだ経験はないでしょうか。

この崩れ方を調べた2024年の研究から見えてきたのは、気合や資質とは別の説明でした。

崩れる仕組みと、研究の支えがある対処のヒントを、分かっていないことも含めて紹介します。

平日の夜、限られた時間でランク戦を回す。
1戦目で理不尽な負け方をして、そこから3戦、4戦と崩れていく。
試合が終わったあと、「メンタルが弱いからだ」と落ち込む。

連敗などをきっかけに感情が乱れ、プレイの判断がどんどん崩れていく現象は「ティルト」と呼ばれます。

こうした崩れ方は、「気合が足りない」「メンタルが弱い」という個人の資質の問題として片付けられがちです。

2024年に公開された1,007名を対象とする研究は、違う説明をしています。

こんな心当たりがあれば、最後まで読んでみてください。

  • 1戦目の理不尽な負けを引きずって、その後の数戦で操作が雑になる
  • 「次のマッチで取り返す」と意気込んで入って、さらに崩れる
  • ティルトしている自覚はあるのに、止め方が分からない
  • 味方への苛立ちなのか、うまくいかない自分への苛立ちなのか、区別がつかないまま試合を続けてしまう

この研究では何を調べたのか

今回紹介するのは、アイルランドのリムリック大学(University of Limerick)のCregan・Toth・Campbellの研究チームが2024年に発表し、心理学領域の国際誌「Frontiers in Psychology」に掲載された研究です。

参加者は1,007名のゲーマー(平均年齢24.2歳、平均ゲーム歴11.9年、週平均プレイ時間15.9時間)。
オンラインアンケートで、ティルトの頻度と強度、感情を整えるやり方、怒り・不安・落胆のレベルなどを測定しました。

統計モデルは、ティルトの個人差の約33%を説明しています(R²=0.333。ティルトしやすさの人による違いのうち、およそ3分の1が今回調べた要因の組み合わせで説明できた、という意味です)。

ここから紹介する数字はすべて、一時点のアンケートにもとづく相関分析から出ています。
「AとBが一緒に動く」ことは分かりますが、「AがBを引き起こす」とまでは言えません。
記事中でも因果を断定せず、「関連していた」という言い方を使います。

研究で分かったこと

発見① 「勝つこと」への固執は、ティルトの高さと関連していた

研究では参加者を「勝つためにプレイ」「上達するためにプレイ」「楽しむためにプレイ」の3グループに分けて、ティルトのスコアを比較しています。

文中に出てくる「p」は、「その差がたまたま出てしまう確率」を表す数値です。
天気予報の降水確率のようなもので、たとえば p < 0.001 なら「まぐれでこの差が出る確率は0.1%未満」。
一般的に5%(p < 0.05)を下回ると「偶然ではなく、意味のある差」と判断されます。

  • 「勝つために」プレイ > 「上達するために」プレイ(p < 0.001)
  • 「上達するために」プレイ > 「楽しむために」プレイ(p = 0.006)
  • 「勝つために」プレイ > 「楽しむために」プレイ(p < 0.001)

勝ちにこだわる動機ほど、ティルトのスコアが高い。

ただし、群同士の差そのものは大きくありません(効果量η²=0.017。「p」がまぐれかどうかを表すのに対し、効果量は差の「大きさ」を表します。差はあるものの、小さい部類です)。

とはいえ「勝ちを目指すな」という話ではありません。
「勝つこと」だけに動機を固定した状態は感情が振れやすい、と読むのが正確なところです。

「今日は絶対に目標ランクまで上げる」と決めて入った夜に、序盤で理不尽な負け方をする。
動機が「勝つこと」に固定されていると、この1敗は「プラン崩壊」として処理され、取り返そうとして普段より攻撃的な判断が増えていきます。

一方、動機を「今日は◯◯の精度を意識する」という上達側に置いていれば、同じ1敗も「◯◯を試せた練習データ」として処理できます。
判断の崩れを1つ減らせるだけでも、十分な利得だと考えられます。

この「何を意識するか」の決め方は、「練習量」とランクの関係を調べた研究を扱った記事で詳しく紹介しています。練習時間を増やせない社会人プレイヤーには、こちらも参考になるはずです。

発見② ティルトを最も強く予測したのは「怒り」だった

「重回帰分析」は、複数の要因が結果とどう関係しているかを同時に調べる統計手法です。
「β(ベータ)」は関連の強さを表す数値。プラスなら「一緒に増える」、マイナスなら「片方が増えるともう片方は減る」関係で、0から離れるほど関連が強いことを意味します。

分析の結果は次のとおりです。

  • 怒り(β = 0.559, p < 0.001):飛び抜けて強い予測因子
  • 注意のそらし戦略(β = -0.114, p < 0.001):ティルトの低さと関連
  • ゲーム経験年数(β = -0.091, p = 0.005):長いほどティルトが低い傾向
  • 週プレイ時間(β = 0.063, p = 0.018):長いほどティルトが高い傾向

不安や落胆には統計的に有意な関連が確認されず、怒りだけが突出していました(不安はβ = 0.001、落胆はβ = -0.018で、いずれも有意ではありませんでした)。

ティルトは「負けて落ち込む」状態というより、「負けて怒る」状態に近い。そういう結果です。

同じ研究では、「MOBAジャンルのプレイヤーは、アクションアドベンチャーのプレイヤーよりも怒りのレベルが有意に高い」(p = 0.003)ことも示されています。
論文はこれを、MOBAで報告されている有害な振る舞い(暴言や味方への攻撃)の多さと関連づけて議論しています。
ボイスチャットやピンで挑発が起きやすい対戦FPSも構造としては近い環境だ、というのがGAME STEP編集部の見立てです。

たとえば、序盤に味方が単独で突っ込んで倒れ、責めるようなピンやチャットが飛んでくる場面。
このとき内側に湧いているのは「落胆」ではなく「怒り」です。
怒りは行動を駆り立てる感情なので、「見せつけてやる」というモードのまま次の交戦に入り、無理な仕掛けからやられて連敗へ。この流れに心当たりのある方は多いのではないでしょうか。

発見③ 統計的に有意だったのは「注意をそらす」ことだけだった

研究では、感情への対処を5種類(BERQという尺度:引きこもり・積極的対処・社会的サポートの希求・無視・注意のそらし)に分けて測定しています。

このうち、ティルトの低さと統計的に有意に関連していたのは「Seeking distraction(注意のそらし)」、つまり一時的にゲームから意識をそらす行動、ただ1つでした。

状況に働きかけて立て直そうとする「積極的対処」のような、いかにも効きそうな行動には、有意な関連が確認されませんでした。

この研究は戦略同士の優劣を競わせた実験ではないため、「そらす方が何倍効く」といった比較はできません。
言えるのは「5つの中で、ティルトの低さと有意に結びついていたのは注意のそらしだけだった」ということです。

関連して論文では、eスポーツ選手が2時間のプレイの途中に6分の歩行休憩を挟むと、実行機能(脳の判断・抑制の働き)のテスト成績が改善したという別の研究にも触れられています(21名を対象にした無作為化比較試験。座ったままの休憩では改善が見られず、ゲームの成績自体は変わっていません)。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

連敗で崩れるかどうかは、「メンタルの強さ」という曖昧な資質だけでは説明されていません。鍵になっていた感情は怒りで、落ち込みや不安ではありませんでした。

「気合で耐える」「前向きに考え直す」といった根性側の対処は、この研究では検証されていないか、支えが見つかっていません。

だとすれば、鍛えるべきは我慢ではなく、怒りに気づく習慣と、崩れたときに使う手順を事前に決めておくことだと考えられます。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

研究が示したのはここまでの「関連」です。以下の具体的な数字や手順は、その知見を日々のプレイに落とし込むためのGAME STEP編集部の実践案です(この手順そのものの効果を研究が検証したわけではありません)。

  1. プレイ開始前に、今日の動機を1つ宣言する。「勝つ」ではなく「◯◯を意識する」「◯◯を試す」という上達側の言葉に置き換えます。「今日は勝ちたい日」があってもかまいませんが、その日は感情が振れやすいことを自覚して入るのがポイントです。
  2. 試合中、「今、怒っているな」とラベリングする。湧いた感情が怒りなのか落胆なのかを区別すること自体が、対処の分岐点になります。
  3. 連敗したら席を離れるルールを事前に決めておく。目安は「3連敗したら5〜10分」。離席中はゲームと無関係のこと(飲み物を淹れる・窓の外を見る・別ジャンルの動画を見る)を選びます。攻略動画や戦績の見直しは意識がゲームに残るため、「そらす」行動には向いていません。

指導の現場でこの離席ルールを提案すると、最初は「そんな悠長な時間はない」という反応が返ってくることがよくあります。
ただ、実際に試したあとには「崩れたまま費やした数戦のほうが、時間の損失としてはずっと大きかった」という感想に変わることが多いようです。

ここで少しだけ、コミュニティのお知らせです。
GAME STEPは、無料のDiscordコミュニティ「GAME STEP LAB」を開いています。
コンセプトは「本気でゲームが上手くなりたい人の研究室」。朝のeスポーツニュースの配信や、この記事のような研究解説の新着が流れてきます。
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この研究から分かること

  • 「勝つため」動機の群は、他の群よりティルトのスコアが高かった(ただし差は小さい)
  • ティルトと最も強く関連した感情は怒りで、不安・落胆には有意な関連がなかった
  • 5つの感情調整のうち、ティルトの低さと有意に関連したのは「注意のそらし」だけだった
  • 経験年数が長いほどティルトは低く、週プレイ時間が長いほど高い傾向があった

この研究だけでは分からないこと

論文自身が挙げている限界は次の3点です。

  • ティルトを測る「ものさし」自体がまだ検証の途上にある(定番となる尺度が存在しない)
  • 参加者が主にヨーロッパのプレイヤーに偏っている(文化による違いは未検証)
  • すべて自己申告のデータである

また、研究の設計上、次のことは言えません。

  • 一時点の相関分析のため、因果関係(怒りがティルトを引き起こす・そらせばティルトが減る)は証明されていない
  • 参加者の約79%が男性のため、女性プレイヤーに同じ傾向が当てはまるかは分からない
  • 勝率や成績が改善するかどうかは、この研究では調べられていない

まとめ

  • 連敗で崩れる「ティルト」は、気合の量ではなく怒りへの対処と関連していた
  • 落ち込みや不安ではなく、怒りに気づけるかどうかが分岐点
  • 研究上の支えがあるのは「一時的に意識をゲームからそらす」こと

今日から1つだけ選ぶなら、「連敗したら席を離れる」ルールを、崩れる前に決めておくことをおすすめします(編集部の実践案です)。

GAME STEPが考える「上達の仕組み」

GAME STEPは、上達を「才能や気合」ではなく「環境とルールの設計」の問題として扱う、eスポーツの個別コーチングサービスです。
停滞や伸び悩みに悩むプレイヤーに向けて、90分のマンツーマンセッションと、日々のチャット相談・宿題の設計で上達を伴走しています。

今回のティルトも同じ構造です。崩れたときに使う手順を1つ決めておくだけで、連敗の夜の崩れ方は変わります。

気になった方への入口は3つあります。

  • どんなサービスかをまず知りたい方は、GAME STEPのトップページをご覧ください
  • 直接話を聞いてみたい方向けに、無料相談(20〜30分・オンライン)を用意しています(入口はこのすぐ下にあります)
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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。

参考文献

  1. Cregan, S. C., Toth, A. J., & Campbell, M. J.(2024). “Playing for keeps or just playing with emotion? Studying tilt and emotion regulation in video games” Frontiers in Psychology, 15. doi.org/10.3389/fpsyg.2024.1385242
  2. DiFrancisco-Donoghue, J., Jenny, S. E., Douris, P. C., et al.(2021). “Breaking up prolonged sitting with a 6 min walk improves executive function in women and men esports players: a randomised trial” BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 7(3). doi.org/10.1136/bmjsem-2021-001118
WRITER
GAME STEP編集部

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